はじめまして、大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック院長の岩村宣亜と申します。京阪神で十数年、消化器外科医として研鑽し、令和4年8月に当院を大阪・梅田に開院しました。
鼠径ヘルニアは男性の3人に1人が生涯のうちに発症する可能性があるとされる疾患であり、良性疾患ではあるものの、嵌頓をきっかけに緊急手術を必要とする可能性があります。開腹手術や小腸切除といった手術侵襲が患者さまの以後の生活に与える影響は、決して小さくありません。一方で、鼠径部の診察が恥ずかしい、特段症状もない、仕事で忙しい、といった理由から受診が遅れがちになる傾向にあります。当院で行う日帰り腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術は、そういった患者さまのニーズに届く診療であると考えます。
腹腔鏡手術ならびに麻酔技術の進歩もあり、日帰り腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術は、全国的に徐々に普及しつつあります。腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術は、傷が小さく痛みが少ないことから、早期の社会復帰に適した手術方法です。従来の鼠径部切開法を日帰りで行うクリニックは既に存在しますが、当院では令和4年8月の開院以降、令和6年10月末までに1,375例の手術を施行いたしました。そのうちほぼ全例を腹腔鏡で施行し、また全ての患者さまに日帰りでお帰りいただきました。少しずつ月の手術件数も増加し、現在では月間70例以上の手術件数を有しております。まだまだ少ない数ではございますが、今後も実績を積むことで、日帰り腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の安全性の確立と普及に努める所存です。
一方で、鼠径ヘルニア診療における腹腔鏡手術は、ここ十数年で全国的に普及したものの、一般の外科診療においては他のSpecialtyを持ちつつ、語弊を恐れずに言うと『片手間で』行われているのが現状です。鼠径ヘルニアの標準治療であるメッシュ法は、不十分な技術で施行された場合、患者さまに一生涯に渡る好ましくない影響を残す可能性があり、専門医による診療が推奨されます。